ロシア 石油。 ロシアとの石油戦争に…自滅に向かいかねないサウジの行方|日刊ゲンダイDIGITAL

逆説の石油戦争。原油相場を押し上げる“サウジ・ロシア・米国連合”

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パイプライン開通の記念式典にはロシアの プーチン大統領と中国の習近平国家主席がテレビ会議を通じて参加し、両国の親密ぶりをアピールした。 このパイプラインは全長約3000km。 東シベリアのチャヤンダ・ガス田から当初は年間50億立方メートル、全線が稼働する2025年には年間380億立方メートルの天然ガス(日本の年間消費量の3分の1)が中国へ供給される見込みである。 当面は吉林省と遼寧省までの開通だが、最終的には北京や上海までパイプラインが整備されることになっており、これによりロシアはドイツに次ぐ第2位のガス輸出先を確保することになる。 両国間の契約によれば、シベリアの力は今後30年間で合計4000億ドルの収入をロシアにもたらすことになっている。 プーチン大統領は式典に際し、「世界のエネルギー市場にとって、そして何よりも両国にとって歴史的な出来事だ」とその意義を強調した。 12月3日付ニューズウィークが『ロシアと中国、パイプライン開通で米国に対抗』と題する記事を掲載したように、世界のメディアも一様に「プーチン外交が再び勝利した」と称えている。 ロシアは今後多額の負債を抱える だが、エネルギー専門家の見方はまったく違っている。 ロシアのエネルギー専門家は「プーチン大統領はロシアの面子を保とうとするあまり、今後多額の負債を抱えたことになった」と酷評しているが、どういう意味だろうか。 思い起こせば、2014年5月のロシアをめぐる国際環境は最悪だった。 ロシアによるクリミア併合を理由に欧米の制裁が同年3月に科され、ロシアは国際社会で孤立する事態となっていた。 この状況を打開するためにプーチン大統領が切ったカードは「中国への接近」である。 同年5月に中国を訪問したプーチン大統領は、10年近く難航していた中国との天然ガスパイプライン契約を妥結に導いたが、交渉妥結にとって最大の障害であった天然ガスの供給価格についての発表はなかった。 一部の専門家の間で流布している供給価格は、ロシア側が流している総額4000億ドルという数字を10年間に供給される天然ガス量(1兆1400億立方メートル)で割ることで算出されたものにすぎない。 2019年8月にロシア・エネルギー省幹部が「天然ガス供給契約に関する技術的問題については合意に至ったが、価格については協議を継続している」と述べたように、契約合意から5年を経過してもなお価格交渉が継続しているのである。

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「ロシア対サウジアラビア、原油価格暴落、それぞれの思惑は?」(キャッチ!ワールドアイ)

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サウジアラビアとロシアが原油生産をめぐって対立を深めている。 サウジはロシアに石油減産の要求をしていたが、3月6日、ウイーンで開かれたOPEC(石油輸出国機構)プラス会合で、ロシアがこれを拒絶した。 これを受けて、サウジは一転して自身が主張してきた減産ではなく、増産していく意向を明らかにした。 増産になれば石油価格は当然下がり、3月9日、ニューヨーク原油先物価格は一時1バレル30ドルを割り込むなど、2016年2月以来の安値を更新した。 サウジは、ロシアの拒否の姿勢に対して即座に報復したわけだが、ロシアは石油を減産すれば、米国のシェールオイル(深度が深いシェール層から採れる石油)が世界市場でのシェアを拡大し、利益を増加させると考え、これを警戒してきた。 サウジの国営石油企業サウジアラムコは、4月から市場への原油供給量を現在よりも26%多い日量1230万バレルに引き上げることを明らかにした。 サウジには、ロシアにショックを与えて、ロシアを交渉に戻すという狙いがあるのかもしれない。 サウジの手法は、最初に売値を高く吹っかけ、次第に値を下げていくアラブの商人の手法のようだ。 しかし、メンツを大事にするアラブ式交渉術は、引き際を誤ることもある。 サウジは長期的な安値を望んでおらず、短期間にロシアを交渉のテーブルに戻したい意向のようにも見える。 しかし、安値が続けば、サウジの収入を大きく減らすことになり、自らのクビを絞めることにもなりかねない。 2019年、石油からの収入はサウジの歳入全体のおよそ68%を占めた。 石油からの収入が減れば、サウジ財政を逼迫させ、ムハンマド皇太子が意図する様々な分野での改革を停滞させる可能性がある。 サウジのムハンマド皇太子は、石油依存型経済から投資や観光、製造業、物流など経済の多角化を目指し、軍需産業の育成、民間企業の役割拡大などで国民の生活水準を引き上げることを意図している。 しかし、石油価格の下落による歳入の減少は、投資家の信頼を失い、通貨リヤルの価値が下落して、インフレを招くなど国民の不満を増幅することも考えられる。 サウジでは、東部の石油産出地帯にシーア派住民が集中して住んでいて、王政への不満を時に爆発させ、王政もこれを弾圧してきた。 サウジは、ロシア石油の主要な市場でもあるヨーロッパ諸国に対して、価格競争をしかけていく意向も見せている。 プーチン大統領は、シリアへの軍事介入に見られるように、中東地域へのロシアの影響力拡大を目指していた。 18年10月にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で発生したカショギ記者殺害の指示を出したと見られるムハンマド皇太子にも接近する姿勢を見せ、カショギ事件から1年後の19年10月にサウジアラビアを12年ぶりに訪問したのもそのためだ。 米国トランプ政権がイランとの緊張を高め、トルコとの関係がぎくしゃくする中で中東地域におけるロシアの影響力拡大を印象づけた。 ロシアがOPECと協調し、「OPECプラス」と呼ばれる協調体制を築いてきたのも、中東地域においてその存在感を高めたい意向があった。 プーチン大統領とすれば、ロシアの利益を損ない、ロシアと対立するサウジの措置は予想外のことで、OPECプラスの価格調整機能も大きく崩れることになった。 ウクライナのクリミア半島併合など強硬な姿勢で、欧米諸国の圧力にも屈しなかったプーチン大統領は、同様に強権的なスタンスをとるムハンマド皇太子のような人物の扱いには慣れていないのかもしれない。 サウジの増産を受けて、ロシアのルーブルは9日に大幅安となったが、ロシアはその責任をサウジに転嫁し、その増産の措置を強く批判するようになっている。 サウジとの石油論争が長期化すれば、ロシアは重大な通貨危機を迎えるとも考えられている。 OPECプラスに参加していない米国は、減産によって価格の下落を防いできたOPECプラスに逆らうかのように、シェールオイルの増産を続けてきた。 サウジ石油よりも生産コストが高いシェールオイルは、サウジの増産による低価格の競争に勝てなくなる。 サウジとロシアが短期間に相違の調整をできず、さらにその対立が政治分野にまで発展すれば、中東地域全体の不安定にまで発展しかねない。 シリアでは、ロシアはアサド政権を支え、サウジは反政府武装集団を支援してきた。 またロシアはサウジと対立するイランに武器を供給するなど両国には政治的には衝突せざるをえない要因が横たわっている。 また、石油価格の低迷は、産油国の経済をいっそう苦境に追い込むことになり、ナイジェリアやアンゴラなど生産力が低い国々は、増産によって収益の拡大を図ることができない。 イラクでは、昨年10月から始まった反政府デモで700人以上が犠牲になっているが、油価の下落は、政治・社会的騒擾のさらなる拡大をもたらしかねない。 米国の経済制裁を受けるイランにとってもいっそうの歳入減となり、コロナウイルスの感染拡大もあって、体制に対する不満が一段と増幅することも考えられる。 原油価格の下落は、昨年話題となった南米ベネズエラの危機をいっそう深刻にさせた一つの要因でもあった。 油価の低迷は、シェールエネルギー関連の米国企業の株価を下げたり、その倒産をもたらしたりすることにもなり、深刻な金融不安をもたらし、日本経済にも否定的影響を与える可能性もある。 サウジとロシアの対立がもたらした石油増産と価格の下落は、コロナウイルス報道に隠れて目立たない印象だが、私たち日本人の生活にも深刻な影響を及ぼしかねない。

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ロシアの経済

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サウジアラビアとロシアが原油生産をめぐって対立を深めている。 サウジはロシアに石油減産の要求をしていたが、3月6日、ウイーンで開かれたOPEC(石油輸出国機構)プラス会合で、ロシアがこれを拒絶した。 これを受けて、サウジは一転して自身が主張してきた減産ではなく、増産していく意向を明らかにした。 増産になれば石油価格は当然下がり、3月9日、ニューヨーク原油先物価格は一時1バレル30ドルを割り込むなど、2016年2月以来の安値を更新した。 サウジは、ロシアの拒否の姿勢に対して即座に報復したわけだが、ロシアは石油を減産すれば、米国のシェールオイル(深度が深いシェール層から採れる石油)が世界市場でのシェアを拡大し、利益を増加させると考え、これを警戒してきた。 サウジの国営石油企業サウジアラムコは、4月から市場への原油供給量を現在よりも26%多い日量1230万バレルに引き上げることを明らかにした。 サウジには、ロシアにショックを与えて、ロシアを交渉に戻すという狙いがあるのかもしれない。 サウジの手法は、最初に売値を高く吹っかけ、次第に値を下げていくアラブの商人の手法のようだ。 しかし、メンツを大事にするアラブ式交渉術は、引き際を誤ることもある。 サウジは長期的な安値を望んでおらず、短期間にロシアを交渉のテーブルに戻したい意向のようにも見える。 しかし、安値が続けば、サウジの収入を大きく減らすことになり、自らのクビを絞めることにもなりかねない。 2019年、石油からの収入はサウジの歳入全体のおよそ68%を占めた。 石油からの収入が減れば、サウジ財政を逼迫させ、ムハンマド皇太子が意図する様々な分野での改革を停滞させる可能性がある。 サウジのムハンマド皇太子は、石油依存型経済から投資や観光、製造業、物流など経済の多角化を目指し、軍需産業の育成、民間企業の役割拡大などで国民の生活水準を引き上げることを意図している。 しかし、石油価格の下落による歳入の減少は、投資家の信頼を失い、通貨リヤルの価値が下落して、インフレを招くなど国民の不満を増幅することも考えられる。 サウジでは、東部の石油産出地帯にシーア派住民が集中して住んでいて、王政への不満を時に爆発させ、王政もこれを弾圧してきた。 サウジは、ロシア石油の主要な市場でもあるヨーロッパ諸国に対して、価格競争をしかけていく意向も見せている。 プーチン大統領は、シリアへの軍事介入に見られるように、中東地域へのロシアの影響力拡大を目指していた。 18年10月にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で発生したカショギ記者殺害の指示を出したと見られるムハンマド皇太子にも接近する姿勢を見せ、カショギ事件から1年後の19年10月にサウジアラビアを12年ぶりに訪問したのもそのためだ。 米国トランプ政権がイランとの緊張を高め、トルコとの関係がぎくしゃくする中で中東地域におけるロシアの影響力拡大を印象づけた。 ロシアがOPECと協調し、「OPECプラス」と呼ばれる協調体制を築いてきたのも、中東地域においてその存在感を高めたい意向があった。 プーチン大統領とすれば、ロシアの利益を損ない、ロシアと対立するサウジの措置は予想外のことで、OPECプラスの価格調整機能も大きく崩れることになった。 ウクライナのクリミア半島併合など強硬な姿勢で、欧米諸国の圧力にも屈しなかったプーチン大統領は、同様に強権的なスタンスをとるムハンマド皇太子のような人物の扱いには慣れていないのかもしれない。 サウジの増産を受けて、ロシアのルーブルは9日に大幅安となったが、ロシアはその責任をサウジに転嫁し、その増産の措置を強く批判するようになっている。 サウジとの石油論争が長期化すれば、ロシアは重大な通貨危機を迎えるとも考えられている。 OPECプラスに参加していない米国は、減産によって価格の下落を防いできたOPECプラスに逆らうかのように、シェールオイルの増産を続けてきた。 サウジ石油よりも生産コストが高いシェールオイルは、サウジの増産による低価格の競争に勝てなくなる。 サウジとロシアが短期間に相違の調整をできず、さらにその対立が政治分野にまで発展すれば、中東地域全体の不安定にまで発展しかねない。 シリアでは、ロシアはアサド政権を支え、サウジは反政府武装集団を支援してきた。 またロシアはサウジと対立するイランに武器を供給するなど両国には政治的には衝突せざるをえない要因が横たわっている。 また、石油価格の低迷は、産油国の経済をいっそう苦境に追い込むことになり、ナイジェリアやアンゴラなど生産力が低い国々は、増産によって収益の拡大を図ることができない。 イラクでは、昨年10月から始まった反政府デモで700人以上が犠牲になっているが、油価の下落は、政治・社会的騒擾のさらなる拡大をもたらしかねない。 米国の経済制裁を受けるイランにとってもいっそうの歳入減となり、コロナウイルスの感染拡大もあって、体制に対する不満が一段と増幅することも考えられる。 原油価格の下落は、昨年話題となった南米ベネズエラの危機をいっそう深刻にさせた一つの要因でもあった。 油価の低迷は、シェールエネルギー関連の米国企業の株価を下げたり、その倒産をもたらしたりすることにもなり、深刻な金融不安をもたらし、日本経済にも否定的影響を与える可能性もある。 サウジとロシアの対立がもたらした石油増産と価格の下落は、コロナウイルス報道に隠れて目立たない印象だが、私たち日本人の生活にも深刻な影響を及ぼしかねない。

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